波が砕けたあと砂浜を駆け上がる水は遡上波と呼ばれ、上るにつれて薄くなり、最後は厚さ数ミリの水の膜になる。止まったその瞬間、運んでいたいちばん軽いもの、細かい砂や雲母のかけら、泡や海藻の切れ端が、先端に沿って置いていかれる。そのあと引き波が下から抜けていき、高さ2ミリにも満たないことの多い小さな筋が残る。
一本一本は陸のほうへ膨らんだ弧になる。波は真ん中のほうが両端より遠くまで上がるからだ。新しい弧が古い弧を横切り、浜の一角は重なり合う波形の縁取りの積み重ねになる。崩れずに残るいちばん高い一本が、この一時間に海がどこまで来たかをおおよそ示している。上げ潮のときは、線はできるそばから消されていく。下げ潮のときは順番どおりに取り残され、斜面を一段ずつ下っていき、砂が引いていく水の短い記録を持つことになる。
真昼の目にはほとんど見えず、低い斜光の時間にいちばんはっきりする。小さな筋の一本一本が自分より長い影を落とすからだ。砂に混じる黒っぽい重鉱物の粒も助けになる。立ったままの高さから撮ると、なめらかな地の上の細い曲線の筆致になり、近くで見れば細部だらけ、一歩引けばほとんど何もない。画面の上では、模様に求めたいのはまさにその性質だ。探せばそこにあり、アイコンを見ているあいだは黙っている。